先日、SNSで一通のDMが届きました。
その内容は、以下のようなものです。
「〇〇(メジャーアーティスト)のカバーをAIで作成し、その音源をステム(パート別)に音色分離したものを、再度打ち込み直してさらにアレンジしてもらえませんか?YouTubeにアップして収益化を目指したいんです」
どうやら、私がDTMで制作したカバー曲をYouTubeで見かけ、声をかけてくださったようです。
自分の活動が誰かの目に留まり、評価されたこと自体はとても嬉しいことでした。
ただ、私はこの嬉しい気持ちを一度落ち着かせ、冷静になって確認をさせていただきました。
「どちらのAIを使ってカバー曲を生成される予定ですか?」
「□□(音楽生成AIサービス名)です」
返答として、ある有名な音楽生成AIサービスの名前が挙がりました。そこで、私は続けて確認を入れました。
「□□は著作権で守られている既存曲をアップロードすることは禁止されていますが、それはご存じでしょうか?」
――その後、相手からの連絡は途絶えました。アカウントを確認しても、私からは見えない状態(ブロックされた状態)になっていました。
私は法律の専門家ではありませんが、念のためネットで調べた情報をもとにお話しすると、今回の方法は法律的にも、音楽自動生成AIサービスの利用規約的にも「違法・違反」になる可能性が極めて高いそうです。
【原盤権(音源の権利)の問題】
CDや配信音源などの音源データを、許可なくAIサービスにアップロードする行為は「複製権の侵害」にあたるんだそうです。
自分で購入した音源を個人のクラウド(Googleドライブなど)に保存する行為は、著作権法第30条の「私的使用のための複製」にあたり、バックアップとみなされるようで基本的には問題ないんだそうで。
しかし、AIサービスにカバー曲を生成させるためにアップロードすることは、単なるバックアップとは意味が異なります。
「AIにデータを読み込ませて、新しい曲へ改変・出力させる利用」となり、私的使用の範囲を完全に超えてしまうため、他人の曲で行うと「複製権」および「著作隣接権」の侵害になってしまうそうです。
ネット上のAIサービスにデータを送信(アップロード)する行為は、「公衆送信(またはその送信化)」に該当すると判断されるリスクがあります。
そうした背景もあるのか、その音楽生成AIサービスでは「他人が権利を持つ音源のアップロード」を規約で明確に禁止しています。
最近、YouTubeでは有名アーティストの曲をAIで生成し、メタル風や歌謡曲風など様々なジャンルにアレンジしてアップしているコンテンツをよく見かけます。
現在のYouTubeのルールでは、AIを利用してリアルなコンテンツを作った場合は「AIの使用」という項目があり、そこにチェックを入れる必要があったと思います。
しかし、そうした動画の多くには「AIマーク」が付いていないことがよくあります。
Youtubeにアップできているので有名な生成AIサービスを利用して作ったコンテンツではないとは思いますが、本当に大丈夫なコンテンツなのか?と疑ってしまう自分も正直います。
YouTubeにおける一般的な「弾き語り」や「打ち込み」などのカバー曲は、YouTubeとJASRAC等との包括契約によって許可されています。
また、AIそのものでカバーを生成して、あくまで「個人」で楽しむ分には自由かもしれません。
ネットにある生成AIサービスではなく、個人のローカルサーバー環境に構築したAIで生成したとなればまた話は変わりそうです。
しかし、ネット上の音楽生成AIを使ってカバー曲を作る行為は、やり方によって違法になります。
あのDMをくれた方は、そのことを知っていたのでしょうか?
「AIサービスに作らせたそのままのデータではYouTubeにアップできない(違法・違反になる)」と分かっていたからこそ、私に『打ち込み直してアレンジしてほしい』と頼み、違法性を隠蔽しようとしたのではないか・・・
邪推かもしれませんが、そう思わずにはいられませんでした。
最近SNSでは、「音楽生成AIを利用して、作曲家として音楽収益化を目指そう」とうたうセミナー生募集の投稿をよく見かけます。
このような投稿を見るたびに思います。
このような投稿を見るたびに私は思います。私自身はセミナーに参加したことがないので、今回のようなグレー(あるいはアウト)な手法がセミナー内容に含まれていることはないはずですし、むしろ「こういうことはしてはいけない」と教えているのだと信じています。
しかし、そもそも私個人の意見として言わせていただくなら、もし今回のような(違法性を隠すような)方法で活動するのであれば、それは「作曲家」でも「音楽家」でもありません。ただの「生成家」です。
AIサービスを利用してカバー曲を作り、YouTubeで収益化を目指そうとしている方は、一度サービスのルールや法律面をしっかりと確認するべきだと思います。
私もこの件で色々と調べるきっかけができ、良い勉強が出来ました。
今回は相手との連絡が途絶えてしまいましたが、当然、今後このようなお話があっても私は絶対にお受けいたしません。
私はこれからも、自分の実力でカバー曲を作って音楽を楽しんでまいります。