先日からいくつかCMの動画を制作しているときに、規格や規約があり結構注意点がありました。

TV局に最後に納品するテープ作りは別会社が行ってくれるのですが、そのテープに入れる動画データまでは私自身が行うため、これまでその会社との打ち合わせや確認で分かったこと、制作でどのような内容でデータをお渡しすれば良いか分かったことをここに記載して残します。

もちろん自分の作業用としてですが、同じように請負を始めるまだ知識が少ない方への参考として、また、しばらく作業して忘れてた方の再確認用としても利用できればと思います。

 

シーケンス設定はXDCAM

自分は主にAdobe Premiere Proを利用して動画データを制作します。テープ会社でOKをもらった動画制作作業した時のその時のシーケンス設定では以下の内容で設定を行いました。

ビデオ
編集モード:Sony XDCAM HD422 1080 NTSC
フレームサイズ:1920 x 1080 px アスペクト比 16:9
タイムベース:29.97 フレーム/秒
ピクセル縦横比:正方形ピクセル(1.0)
フィールド:奇数フィールドから
オーディオ
サンプルレート:48000Hz

 

上記のような単語が含まれているテンプレートがあればひとまずそれを選んだ方が良いと思います。自分の場合は編集モードを選ぶと他の部分の設定が自動で適応されていました。

 

映像はセーフティーマージン内

映像に文字や画像、キャラクターなど色々と表示させたいものがあると思いますが、映像の主体となるものはセーフティーマージンと呼ばれる映像枠から10%縮めた枠内に収めましょうという基準があるそう。これは制作した動画を実際の放送で見たときにTV次第では見切れたりするので、それを防ぐために見切れても良い部分より内側に文字やキャラクターを入れてくださいとのこと。

そのためキャラクターや文字でも背景として使用していますので見切れても大丈夫ということであれば、はみ出ても問題なしのようです。

 

音声は前後0.5秒間は無音

例えば15秒のCM動画を作る場合、頭最初から音声が流れ出すのはNG。映像始まりの0.5秒間は無音で、終わりの0.5秒間も無音にする必要があります。そうしないとTVは番組、CM合わせてずっと音声が続きっぱなしになりどこが区切りか分からなくなるからだそうです。

PremiereProで作業するのであれば、15フレーム分の調整で良いと思います。

もしCM用のBGMを用意する場合、15秒でなく14秒で制作する必要があるということになります。

 

音のラウドネス調整

動画に使うデータはAfter Effectで作ったり、カメラで撮影したものを取り込み、BGMに音楽を取り込んだりなどは普段通りで大丈夫でしたが、その後のTVCM用として音声調整がありました。それは「ラウドネス」調整。国内で放送される番組の音声のばらつきをなくすというもの。

ちなみに

「ラウドネス」とは「人が感じる音の大きさ」のことで、音の知覚に関する基本的な性質の一つ

だそうです。

この調整をする場合はPremiereProのオーディオというワークスペースで行いましたが、その作業方法は別の記事で残しますのでここでは割愛します。ただ、標準であるエフェクトプラグイン「ラウドネスメーター」を使って基準値内に収まるように、BGM、ナレーションの音量調整します。その基準は以下の内容になります。

ラウドネス調整基準
ターゲットラウドネス -24.0 LKFS
ローレベル基準 -25 LKFS
最大トゥルーピーク -1

 

LKFSとLUFSというのがありましたが、私はLKFSで設定しました。ターゲットは-24.0。プラマイ1という範囲内に収まるようにします。

 

CMデータに必要な作業

動画に使うデータはAfter Effectで作ったり、カメラで撮影したものを取り込み、BGMに音楽を取り込んだりなどは普段通りで大丈夫でしたが、その後のCMデータ用として必要なものや調整がありました。

ブラックビデオ
カラーバー
クレジット
ファーストカット
ラストカット

 

実際に放送する映像とラウドネス調整した音声を挟むように上記の素材を追加するのですが、順番としては次のようにします。

ブラックビデオ(無音)5秒 → カラーバー45秒 → クレジット12秒 → ファーストカット3秒 → 本編 → ラストカット3秒 → ブラックビデオ(無音)30秒

 

カラーバーは放送で定められたカラーと音の高さ、音量が決まっているので独自で行うと審査に認められず返却されるので、ちゃんと決まっているものを使用します。

ブラックビデオは真っ黒な画像でも大丈夫です。PremiereProであればメニューバーからファイル > 新規 でブラックビデオもしくはカラーマットで黒を選んでも良いかと思います。

カラーバーも同じくメニューバーからファイル > 新規 でカラーバー&トーンを選びますが、音の高さと音量の設定が必要となります。

基準音-20db
1kHzの正弦波信号

 

という事なので、作成時に-20dbで1kHz(1000Hz)と設定すれば新規追加時に音量調整されたトーンが出来上がります。

ファーストカットは映像の最初の1フレーム分の画像を用意します。

逆にラストカットは映像の最後の1フレーム分の画像を用意します。ただ、ラストカットの最後の部分は注意点を業者に指摘され、参考になったのでこれはまた別で残します。

これらのデータを本編を挟むようにして全体データが出来上がり、最後これを業者に渡す用のデータを書き出します。

 

書き出しはなるべく非圧縮

本来はネットを介してデータを渡す場合はなるべく軽い方がいいのですが、放送する用のデータを少しでも軽くするということは映像も何かしら影響を受けて荒くなったりする恐れもあるわけで、なるべく高品質で渡すべきです。ただ、圧縮技術も様々で品質も向上しているため、MP4で書き出しても問題ない場合もあります。

ネットの技術も進化し、1G程度のサイズであれば現在では数分で送受信できるようにもなっていますし、ギガサイズのデータを保管できるサービスも増えていますので、さほど困る環境ではありません。

書き出しではApple ProRes 422 HQ の設定で行います。業者がMP4でも良いというところであれば、ビットレートを13〜15程にして高品質にする方が良いと言われました。

 

テレビ用のCM動画を編集する以外にこのような大変な調整が必要だと知ると、昔から作業されていた方々を尊敬してしまいますね。